相互理解とは?組織内で相互理解を深められるゲーム・ツールを紹介
作成日:2020/7/1
最終更新日:2024/1/12
相互理解とは
相互理解とは、他人同士で互いに双方の考えや価値観がどういうものであるかを理解することを意味します。
この相互理解が深まることで、お互いに気持ちの良いコミュニケーションが取れるようになり、仕事の連携が進むことや心理的安全性を醸成することが可能です。
上司と部下、同僚同士、どういった関係性であっても仕事を行う上で重要なものの1つです。
相互理解が足りていれば退職は避けやすくなる?
あなたの職場はどの程度、相互理解が深まっていますか?
この問いに、なかなか定量的に答えることは難しいかもしれません。
相互理解ができている、できていない、というのはどうしても個人の主観が入ることですので、明示的な基準があるわけではない分、どうやって強化していいか難しいものです。
ただ、相互理解が不足していると、組織にとって望ましくないことが様々起こりうると考えられます。
例えば、相互理解の不足によって退職者の発生を回避しづらくなる、というのも一例です。
リクルート社が調査を行った退職理由の本音ランキングから、相互理解ができていれば避けられた理由を想像してみましょう。
“退職理由の本音ランキング
1位:上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(23%)
2位:労働時間・環境が不満だった(14%)
3位:同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった(13%)
4位:給与が低かった(12%)
5位:仕事内容が面白くなかった(9%)
6位:社長がワンマンだった(7%)
7位:社風が合わなかった(6%)
7位:会社の経営方針・経営状況が変化した(6%)
7位:キャリアアップしたかった(6%)
10位:昇進・評価が不満だった(4%)
退職理由のタテマエランキング~面接ではこう答えよう~
1位:キャリアアップしたかった(38%)
2位:仕事内容が面白くなかった(17%)
3位:労働時間・環境が不満だった(11%)
3位:会社の経営方針・経営状況が変化した(11%)
5位:給与が低かった(7%)
6位:雇用形態に満足できなかった(4%)
6位:勤務地が遠かった(4%)
6位:仕事に対する責任がなく物足りなかった(4%)
9位:上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(2%)
9位:同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった(2%)”
参照:「転職理由と退職理由の本音ランキングBest10(https://next.rikunabi.com/tenshokuknowhow/archives/4982/)」『リクナビネクスト』、記事更新日:2023/11/28、引用日:2023/11/28
例えば、上記の調査では、「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」という理由が退職理由の本音の一位になっていますが、そもそも部下がこういった感情を抱いていることを上司・経営者の方が把握できていないというケースは多そうです。
本音のランキングでは23%の回答者がこの理由を挙げている一方で、下記の退職理由のタテマエランキングの方では、わずか2%だけの人がこの理由を挙げています。
つまり「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」という理由で退職した人のうち、約90%の人は、その理由をタテマエに隠してしまうということが言えます。
また、タテマエランキングで1位で、全体の38%が挙げている「キャリアアップしたかった」は、本音ランキングでは7位の6%。転職時の転職理由にはもちろん、退職時に対会社に説明されている退職理由としてもよく見られるものではないかと思いますが、本音とは違っている可能性がありそうです。
こういった退職理由に挙げられているような問題も、きちんと相互理解ができていれば、退職に繋がる前に是正できたかもしれません。
退職だけでなく、仕事の円滑な進行に支障をきたす、組織の雰囲気が悪くなる、など相互理解ができていないことによって様々な組織課題を引き起こす可能性がありますので、少しでも相互理解を深めていく努力をしたいですね。
相互理解はまず相互に認識できるようにするところから
では、相互理解はどのように深めていくと良いのでしょうか。
「理解」はもう少し易しい言葉で表現すると「わかる」になります。相互理解は、「お互いのことをわかっている」という状態と言い換えられます。
この時に、「わかる」ためにはその前段として、「知っている」という状態になる必要があります。ただ知っているだけなのと、わかっているのとではもちろん差がありますが、まずそもそも知る機会すらない状態では相互理解は生まれません。
まずはお互いのことを知る機会を増やすことで、相互理解に発展する前の状態をできるだけ作っていくことが大事と考えられます。
お互いのことを知るためには、打ち合わせのアイスブレイクや、プロジェクトキックオフなどでコミュニケーションを誘発するようなアクティビティを行い、機会を増やすというやり方もあります。
また、知るためのコミュニケーションを誘発するために、社内にカフェスペースを作るのも一つです。
いずれにしても、相互理解の第一歩として、まずはその人のことを少しずつ知っていくことが必要です。いきなりその人のことを深く「理解」しようとするのではなく、
- その人はどんな仕事をしているのか
- その人はどんな経験を持っているのか
- その人はどんな人とつながっているのか
など、その人の「属性」などについて、相互に情報共有ができる状態を目指しましょう。
相互理解のはじめ方
さて、次のステップは「相互に知っている状態」から、「相互に理解した状態」に持っていくための方法です。
相互理解は自然発生的に深まっていきにくいため、もしチームの中で相互理解を深めようと思ったら、意図的にその機会を創っていく必要があります。
上述のカフェスペースでのラフコミュニケーションによって、どんな人なのかが概ねわかってきますし、一緒に仕事をしていると、その人はどんな仕事の進め方をするのか、その人はどんな能力があるのか、などの情報がお互いに理解していけそうです。
ただ、「その人のルーツや根底にある価値観」や「その人の現在を形作っている過去の経験」などについては自然に共有されにくいものなので、可能であれば意図的に共有していきたいですね。もちろん、こういった事柄は、信頼関係のない相手には話したいと思わないでしょうし、どこまで開示できるかは人によって異なります。無理のない状態で理解をしていくために、共有する情報は少しずつ、お互いにストレスを感じない頻度で設けていくことが良い進め方ではないでしょうか。
相互理解に効果的なゲーム・ツール
何もないところで相互理解を深めていくのはなかなかハードルが高いと思いますので、そのきっかけになるツールをご紹介します。
ストレングスファインダー
ストレングスファインダー®はアメリカのギャラップ社が開発したツールで、オンラインで実施することができる才能診断ツールです。Webサイトで177個の質問に答えることで、自分の才能(=強みの元)が導き出されます。
34の資質が強い順にわかるというもので、お互いの強み弱み、補完関係にあるかどうかなどを知るのに適しています。
普段の言葉や行動が、その人の資質の強さ弱さに関係していると分かると、その人の理解を深めることにつながります。
有料となりますが、多くの企業の研修でも用いられているツールです。
ストレングスファインダーのウェブサイトはこちら
ソーシャルスタイル理論
ソーシャルスタイル理論は、アメリカの産業心理学者であるデビッドメリル氏が提唱したコミュニケーション理論です。4つに分類される人のコミュニケーションのパターンを活用し、適切なコミュニケーションを選択するための手助けとなる理論となっています。こちらも多くの企業で取り入れられるグローバルスタンダードのメソッドです。
- 感情を抑える・出す
- 意見を主張する・聞く
の2×2のマトリクスにスタイルを分類していて、自分がどのタイプかを診断できます。タイプは以下の4種類になります。
ドライビング(意見を主張、感情を抑える)
合理的に仕事を進める目標達成型。感情表現を抑えるタイプで、合理的に物事を達成していくことを好むスタイル。口数が少ない、行動が早い、負けず嫌い、などの特徴があります。
エクスプレッシブ(意見を主張、感情を出す)
みんなから注目されることを好むスタイル。明るく、表情豊かです。新しいことやトレンドに敏感で積極的に何かにチャレンジします。
エミアブル(意見を聞く、感情を出す)
みんなの気持ちを受け止める調整役。まず相手の話を聞く、複数の意見を聞く、などが強み。自分が注目されるよりも全体の調和を重視する。感情は言葉ではなく、より表情に表れる。
アナリティカル(意見を聴く、感情を抑える)
観察を好む分析型。データを重視して、分析してから行動に移すスタイル。感情は表情に表れず、話すよりも聞くことが多い。聞くのも分析のためということが多い。
アンガーマネジメントゲーム
アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで開発された、怒りの感情を自分の中で整理し、客観的に見ることで適切にコントロールを行うための心理トレーニングです。
この考え方をもとに開発されたのがアンガーマネジメントゲームです。
アンガーマネジメントゲームでは、カードに記載された出来事が起こった時に他の人はどれくらい怒りを感じるかを予想して、正解とのギャップが小さい人がポイント獲得するゲームです。
このゲームを通して、コミュニケーションを取れる他、怒りに対するそれぞれの認識の違いが分かり、相互理解が深まります。
モチベーショングラフ
モチベーショングラフは、今までの人生の振り返った時に、どんなタイミングでどんな感情の浮き沈みがあったのか、ということを曲線グラフで表現をしつつ、そのポイントを具体的に説明していくというワークです。
変化の点や、感情の起伏がどのくらい高かったのか低かったのかということを可視化することで、自分の中でも気づいていなかったような自分のターニングポイントに気づくことができたりします。
一人で行っても気づきの多いワークですが、これを複数人で一緒に行い、お互いにその説明をしていくことで相互理解が深まっていきます。
相互理解の落とし穴にも気をつけましょう
さて、様々な相互理解の進め方や、そのためのツールについて紹介してきましたが、相互理解というのは一回できればもう安心、というものでもなさそうです。
時間が経つにつれ人は変化していきますし、環境も変化していきます。相互理解の度合いはこうした変化に伴って減ってしまう可能性もあります。相互理解の度合は、できるだけ高頻度で確認したり定期的にアップデートしていくことが望ましいです。「もうお互いに理解できている」と思ってアップデートを怠っていると、いつの間にか相互理解度が落ちてしまっているということもあるかもしれません。
最近は1on1などに取り組む会社が増えているようですが、定期的な機会を設けて相互理解を深めていくことや、1on1以外の場で意図的に確認していくとよいですね。
従業員が何にギャップを感じているのかをハタラクカルテ®で把握しましょう
相互理解の重要性と相互理解の深め方について解説しましたが、組織内に発生している認識の齟齬を把握するには個人間の相互理解の促進に加え、経営や人事部と従業員の間の相互理解を深めることも必要です。そのための第一歩として、組織サーベイを行うことも重要と考えています。
例えば働きがいを向上させるためには何が課題になっているのか、従業員はどういうことに働きがいを実感しているのかを可視化することで、自社でやるべきことが明確になります。
その上で、組織を変化させるための施策を打っていくことで、「会社はこういう方針で組織を創っていくのだな」ということが従業員にも伝わっていきます。これを連続的に行っていくことで、会社と従業員の相互理解も深まっていくでしょう。
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