離職減で採用コストを削減! 〜地域医療を担う病院の組織風土改革〜
- 業種
- 医療・福祉
- 企業規模
- 101〜500名
- 課題
- 現状把握の裏付け
はじめに
岐阜県で地域に密着した医療サービスを提供されている千手堂病院様。今回は法人本部長兼看護部長をされている天野様に、組織作りの取り組みや「ハタラクカルテ」の効果についてお話を伺いました!
企業紹介
千手堂病院様は療養病床と地域包括ケア病床の2つの病床機能を有している病院です。療養病床では医療依存度の高い方の長期療養に対応し、地域包括ケア病床では急性期治療後の方、 在宅療養中に体調を崩された方を受け入れ、地域社会にお帰しする機能を担われています。また外来では、心臓リハビリテーション、 下肢静脈瘤の日帰り治療、などに取り組まれています。
職員一人一人が作る最適な環境
- 理念について詳しく教えてください。
「『療養する人・支える人・働く人』地域の全ての人に最適な環境を創出する」という理念をかかげています。
120人ほどの中小病院であり、与えられた職場環境ではなく、職員一人一人が「最適な環境」を作り上げていくという意識(ボトムアップの意識)を持って仕事をしています。また、病院機能の特性上、患者様1人1人にとっての最適な環境は異なると考え、他職種メンバーで最良なケアが何かを話し合っています。
- ボトムアップの風土はどのように築きましたか?
2017年に現院長と私が着任するまでは、トップダウン式の病院運営を行っていました。
着任後は、各部署への主任の配置、人材育成を行い、カンファレンスや院内SNSを通した他職種連携の機会を増やすことで、風土改革を図りました。
これらの改革の甲斐もあり、徐々に組織立ってきたのかなと思います。
- 風土改革の中で、最も大変だったことはなんですか?
トップダウンの環境になれている方が多い中で、どこで意見発信の場所を作るか、どのように発言してもらうか、ということが難しかったです。
心理的安全性を担保しつつ、発言をしてもらうために
- 部門長会議を行い、発言できる場を増やすこと
- 院内SNSで「私の仕事はこんなこと」をリレー形式で書くことや「ありがとうカード」を書いてもらうこと
- 物事を提示する際に行動レベルで提示するのではなく、ゴールのみを提示し、自主的な行動を促すこと
などを行いました。
- ボトムアップの風土が築かれていると思った出来事があったら教えてください。
最近は何か問題があった際に、「どうしましょう?」という聞き方ではなく、「〜すると良いと思うのですがどうでしょう?」という聞き方をする職員が増えてきました。
相談をされる側のこちらも、患者さんの命に関わることでなければ現場の意見を積極的に取り入れるように意識しています。
ハタカルを利用して現状確認。退職率低下で採用コスト削減に成功!
- ハタラクカルテを利用しようと思ったきっかけはなんですか?また、使ってみた感想についても教えてください。
以前は退職率が非常に高く、改善をする必要がありましたが、まずは現状を調査しないと、何が原因なのかがわからない状態であり、エンゲージメントサーベイを導入しようと考えました。その中でもハタカルは「ハイジーンファクター*」という考えに言及していて、考えが合致したためハタカルを導入しました。
使ってみた感想としては、明確に各要素が数字で表される点や、他社との比較もできる点で、自分達の病院が組織体としてどの程度の成熟度まできているのかが把握しやすいと感じています。
また法人ごとに設定できるカスタム設問機能があるので、詳しくききたいことが聞けるため、こちら側(人事側)が予測する課題感や現在実施している施策が適しているのかを確認しやすいです。
【ハタラクカルテ紹介資料から抜粋 カスタム設問】
*ハイジーンファクター:主に「心身の健康状態」「会社での人間関係」「職場環境」などによって、仕事における不満足を引き起こす要因を指します。
詳しくはこちら→https://stg.hataraku-karte.jp/herzberg
- 退職率はその後どうなりましたか?
2017年から今まで勤続している職員は当時の1割にも満たないほど高い退職率でしたが、現在では退職者が激減しました。業界全体としては看護師が不足していますが、当院では充足しており、事業拡大による求人を除いて求人を出す必要がなくなりました。
一人採用するのに100万円ほどかかるため、そのコストがかからなくなったのは良いことですね。
- どのように退職率を減らしたのですか?
日々の業務に関する教育の制度ができていないことがハタカルの結果からわかったので、マニュアルの整備やツールの作成などを行い中途新人の早期退職を防ぎ、教える側の負担を軽くしました。それにより人が充足している状況が生まれ、落ち着いて働くことが出来るようになり、さらに働きやすい環境ができるという良い循環が生まれています。
また、当院の看護の理念である「相手の思いによりそった全人的な看護を提供し地位社会に貢献します」を達成するために、採用は、当院が求める人材(理念を達成できる。例えば、患者と向かい合い、患者の思いを聞くことができる)を明確にしています。これが奏功し良い雰囲気、良い人間関係を築けている点も退職率減少の一因だと思います。
一人一人が絶えず考え、自分たちにしかできない看護を提供する。
自分自身が入院したくなるような病院へ
- 従業員の方にはどのように働いていって欲しいですか?
理念にあるように、最適な環境を一人一人が創出して行って欲しいなと思っています。
絶えず職員1人1人が考えることをやめない組織でありたいと思っております。作業の「ムリ」「ムダ」「ムラ」を見直し、効率的に働くことで、患者・家族に向き合う時間の確保をしてほしいとそれぞれが考え、業務改善を行なっています。
この積み重ねによって自分たちにしかできない看護ができていくと思います。
また、当院はワークライフバランスを重要視しています。
自分自身が幸せでないと患者さんに思いやりを持てないと思うので、その人の大事にしていることを大事にできるような環境を法人として整えています。
- 病院全体としては今後どうなっていきたいですか?
個人事業の病院であるため、最低限収益性は確保しつつ、地域のインフラとして最善のケアを提供し続けたいと思っております。そのために現在提供しているサービスラインをしっかり継続していきながら、自分自身が入院したいと思えるような病院を作っていきたいと思っています。
ハタカル編集部の所感
インタビューをさせていただいていく中で、最適な職場を一人一人が作り上げ、地域に最良な医療を提供していこうという天野様の思いを強く感じました。
ハタラクカルテの活用によって、組織体としての成熟度や、組織の現状を知ることができていると伺いました。改めて、組織サーベイの必要性を認識できる機会となりました。
取材ではここに書ききれないほど多くの千手堂病院様の魅力を教えていただきました。貴重なお話を聞かせていただいた天野様ありがとうございました。
(本事例の内容は2024年3月のものです。)